チエロコンサート

チェロコンサートと素敵なガーデンパーティ

 6月のある日、

 お誕生カードのようなきれいな招待状が届いて、私は小さなコンサートに出掛けました。

 誘ってくれたのは友人夫婦。「演奏するのは、元ウィーン交響楽団首席チェリストの吉井健太郎さんなんだよ~」と言われて、なんだかすごそうと・・・。

そもそも私はチェロの音がとても好き。でも、ソロの生演奏は聞いたことがないので、どきどきしました。

会場の「クロスクラブ」は東京、久が原の住宅街の中にあって、聞けば、建築家の山口文象氏が、昭和15年に建てた自宅に併設したものだとか。モダンだけれど懐かしい、そんな心持ちにさせる小さなホールでした。

 

バッハの無伴奏チェロ組曲。

「バッハのチェロ組曲って6曲あるのね。バッハはケーテンという街が好きで、そこに住んでいて。1717年からかな。全部は弾かないけど、2番は短調だよ」なんて、奏者はさりげなく曲の背景を語りつつ、最後に組曲5番を通して演奏し、後はお庭でということになりました。

ホールの中庭は広く、大きなアカシアの木が見事な枝を張っていました。

その一角で再びチェロが弾かれました。

 

チェロの音が空間から解放されて広がっていき、室内とはまた違う音の世界が生まれ、鳥のさえずる声と交じりあいました。

その演奏に合わせて、和服の女性が舞い始め、舞に誘われるようにどこからかオレンジ色の見慣れない蝶があらわれました。

そして、チエロの旋律に合わせ、不意に激しく舞い上がりました。

 

バッハが生きていたのは300年以上前。

後に、様々な作曲家に影響を与え「音楽の父」と呼ばれる人になりましたが、生きていた頃は、悪戦苦闘の日々でした。

早くに両親を失い、最初の妻も失い、子どもたちの多くを病で次々と亡くしてもいます。

 

オレンジ色の蝶と戯れるように奏でられるチェロの音が人生の切なさと美しさを奏でているようでした。

チェロの音に身を浸していると「3百年って、遠い彼方なのか、ほんの短い月日なのか」と不思議な思いに襲われました。 

 

そして、私は、思いました。この世を去る時は、私、バッハのチェロ無伴奏の2番かな、なあんて。

 

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コメント: 1
  • #1

    kazu (日曜日, 16 7月 2017 10:07)

    ゥアオ なんて素敵なコンサート。
    音も屋外で よかったでしょうね。